2010年 06月 23日
思ひ出 5話 |
「この路線でいいんだ この路線で行こう と決めたときバンドは進化しなくなるんだ。」
こう「島唄」等のヒット曲で有名なバンドTHE BOOMの宮沢さんはU2「POP」発売時に、ある雑誌で大胆に変化したアルバムの事を評していた。
U2の偉大なところのひとつは・・
87年に大ヒットした「ヨシュア・トゥリー」の焼き直しを作れば間違いないのに90年代に入り「アクトン・ベイビー」を発表したこと。
東証1部上場企業がまったく新しい経営方針を打ち出してしまうようなものだ。
それで更なる成功を遂げ、また新しい方向性を打ち出していく。良いものは先入観なく取り入れる勇気。
U2は保守的なロックバンドのようで実は違う。企業も政治もかくあるべきだと20年前から示している気がする。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
U2はUNFORGETTABLE FIREアルバム位からシーケンス(打ち込み)との同期演奏が増えていく。
これは意外がられていた。
当時隆盛のテクノポップと一線を画していたのと、ロックはアンチ・エレクトロニクスな音楽だという風潮がある。もともと楽器を電気で音量、音質を変化拡張するという邪道ともいうべき音楽ジャンルなのに・・・
その後もMIDI規格が普及していくと更に顕著に取り入れている。
ドラマーのラリーはシーケンスとの協調「それが好きなんだ。」と雑誌でも語っていた。
OCTOBERを結成した当初、U2をプレイするにあたり「専任のキーボードは入れる気はあるか?」と皆に尋ねたら「考えてない」との返事だった。
しかし、課題曲にあがるのはシンセが必要な曲が多かった。
U2をプレイする折、4人だけだと隙間が空きすぎると思う事が多いと感じるようになってきていた。
実際の本家は、シーケンス・トラックやサイド・ギターを重ねている。格段に厚みが違うのだ。
生演奏は確かにライブ感を与える。
しかし、露骨な隙間を感じさせない演奏をするのは経験と勇気が必要だ。
シンプルな演奏ほど高いスキルが必要だという事は、バンドマンなら特にわかってくれるはずだ。
ある日メンバー専用の掲示板コミュにバウアさんがYOUTUBEのURLを書き込んでくれた。
ZOOTVツアー初期の「ULTRA VIOLET」だった。僕はそのLIVE動画の虜になって何度も観た。
ハウス調に重ねられたシンセ・ストリングスとパーカッショナブルなベース・アルペジオのシーケンスと同期して演奏されていた。
これはすげえ!! こういうU2をやるコピバンになりたい!
でも問題は山積みだった。
◎同期演奏を叶える道具はどうするか?
◎打ち込みはどうやって作るか?
◎果たして格好いいのか?
実は前のバンドで何度かクリック(メトロノーム)との同期演奏をやった経験があった。
その当時は、メンバーに山のようなシンセ・セットを所有する優秀なキーボーディストが居たのでテクニカルな事は一切任せきりだった。
正直必要に迫られたことがなかった。
元来同期演奏は、ドラマーがクリックを演奏中聴き損ねるとTHE ENDというハイリスクな演奏方法だ。
だからドラマーが腹括らねば先ず始まらない。
しかし今回ラッキーな事に始めたいと願ってるのがドラマー本人なのだ。一つ目のハードルはクリアーした。
先ずは、ネットで地道に同期演奏の方法を調べてみた。
だが、情報があまりに乏しい事にすぐ気づいた。
なぜ?DTM隆盛の時代に?
ヒットチャートを賑わす邦楽は高確率で打ち込みトラックに唄を被せている。
彼らのライブではミュージシャンがシーケンスに合わせ演奏してるじゃないか!?
後々分かった事だが、同期演奏のセッティングに結局決定的な定義がないとのこと。
プロはPAからモニターに返すときシーケンスと他のモニターする楽器なりガイド・トラックなり自由が利くので、アマチュアバンドあたりにはあまり参考にならないことが分かった。
諦めず調べると、DTMソフトで作成したシーケンス・トラックとクリック・トラックを分けてMTR(マルチ・トラック・レコーダー)に移し、シーケンス・トラックはPAへ、一方のドラマーにクリック・トラックを送りモニターして演奏するのが1番簡単そうな事がわかった。
まず思い切ってMTRを買った。
KORGのD888という機種だ。
理由は簡単 8IN 8OUT 同期演奏に最適と謳ってあったから。
何のことか当時よく分からなかったのだが・・・
次にこれに入れる打ち込みのネタを作らなければならない。
MIXIにはありとあらゆるニッチ的なコミュがあるが、
同期演奏・・・こんなコミュは存在しなかった。
凄い・・なんて隙間な話題・・・
ないので仕方なく僕が管理者になってコミュを作った。
現在300人弱の参加者がいる。
・・・・・・・・・・・・があまり皆の役に立ってないコミュだ。
一人打ち込みを安価で作ってくれるレコーディング・エンジニアさんが参加してくれた。
あれこれやり取りしながらいろいろ教えてくれた。
彼のバンドはMACを2台使ってPAへ1回送りクリックと同期で被せたものを返してもらい演奏するのだそうだ。
凄い!! でも理解ないPAさんや30分のブッキングライブでそんなこと頼めそうにない・・
僕はエンジニアさんにULTRA VIOLETの打ち込みネタを依頼した。
「本家より攻撃的でトランシーな感じにしてください。」とお願いした。
この件でメンバーは本当によく協力してくれた。
費用負担も快くしてくれたし応援してくれた。
U2コピバンとして正に異質な存在となれる期待に胸が躍った。
後日出来てきた打ち込みは重厚なベースシンセがフューチャーされた素晴らしいものだった。
これに合わせてリハしているとき正直特別な事に挑戦しているような気持ちになった。
またVOCALのバウアさんが打ち込みの尺に合わせ完璧なパフォーマンスをしてくれた。
そのうち打ち込みレパートリーも増え、U2の曲ならなんでも出来る気がした。
自分でもDTMソフトを買い込み、参考書を大人買いし打ち込み作りに没頭した。
指揮を執るドラマーが作成するのは利に適っていると思う。
サンプリングもお手の物になったし、クリックも曲の転調に合わせエフェクトシンバルを入れてわかりやすくする事、ファイルを繋げて連続で打ち込み曲を繋げるなど技も身につけた。
クリックをモニターするのには、SHURE製のカナル型イヤホンを使った。
プロが使うような耳の型枠からつくるイヤモニも欲しかったが、これで十分だった。
こんなに勉強したのは、昔ブラジル人の女の子を口説こうとポルトガル語を必死に勉強した時以来だった。(関係ないか・・)
登場時のSEやリミックスも手懸けられたし、ZOOーTVのパロディで、時の首相やアイドルの声をサンプリングし、本家がZOOTVTOURでやったような電話タイムを試み、バウアさんと会話させ擬似トークした事もある。 360TOURの宇宙飛行士との交信もパロディした。
あれは今でも良い思い出のひとつだ。
世界広し、U2コピーするバンドはとてつもない数あるが、こんなことをやったバンドはいないだろう。
ライブは演奏を聴かすだけでなく曲間から緞帳が降りるまでショーなんだと思う。インディースでも動員あるバンドはすべからく皆そこらへんにも気を使っていると思うのだ。
打ち込みとの同期演奏には一長一短ある。
グルーブ感が損なわれる時がある。何かノリきれないものがある。
音楽には勢いによる奔り(ハシリ)が重要な時がある。正確なBPMを強要されると失われるものもあるのも痛感した。
だけど21世紀も10年経った今、アマチュア・ロックだって30年前と同じ陣容のステージばかりじゃ駄目だと思う。
ロックはオールドスクールなジャンルでは決してないことをもっと示さないと。
今や同期演奏がプロにしか許されないアイテムじゃ決してない。必要ならたった今からでもやるべきだ!と心から思う。
さて話が翻ってLIVEの話題に戻ると、自作でツアーTシャツまで作ってLIVEに目覚めたわれわれだったが、ここまでモチベーションを高められたのは、切磋琢磨する同じU2コピバンの存在が多大だった。
次回 トリバン編最終回へつづく
こう「島唄」等のヒット曲で有名なバンドTHE BOOMの宮沢さんはU2「POP」発売時に、ある雑誌で大胆に変化したアルバムの事を評していた。
U2の偉大なところのひとつは・・
87年に大ヒットした「ヨシュア・トゥリー」の焼き直しを作れば間違いないのに90年代に入り「アクトン・ベイビー」を発表したこと。
東証1部上場企業がまったく新しい経営方針を打ち出してしまうようなものだ。
それで更なる成功を遂げ、また新しい方向性を打ち出していく。良いものは先入観なく取り入れる勇気。
U2は保守的なロックバンドのようで実は違う。企業も政治もかくあるべきだと20年前から示している気がする。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
U2はUNFORGETTABLE FIREアルバム位からシーケンス(打ち込み)との同期演奏が増えていく。
これは意外がられていた。
当時隆盛のテクノポップと一線を画していたのと、ロックはアンチ・エレクトロニクスな音楽だという風潮がある。もともと楽器を電気で音量、音質を変化拡張するという邪道ともいうべき音楽ジャンルなのに・・・
その後もMIDI規格が普及していくと更に顕著に取り入れている。
ドラマーのラリーはシーケンスとの協調「それが好きなんだ。」と雑誌でも語っていた。
OCTOBERを結成した当初、U2をプレイするにあたり「専任のキーボードは入れる気はあるか?」と皆に尋ねたら「考えてない」との返事だった。
しかし、課題曲にあがるのはシンセが必要な曲が多かった。
U2をプレイする折、4人だけだと隙間が空きすぎると思う事が多いと感じるようになってきていた。
実際の本家は、シーケンス・トラックやサイド・ギターを重ねている。格段に厚みが違うのだ。
生演奏は確かにライブ感を与える。
しかし、露骨な隙間を感じさせない演奏をするのは経験と勇気が必要だ。
シンプルな演奏ほど高いスキルが必要だという事は、バンドマンなら特にわかってくれるはずだ。
ある日メンバー専用の掲示板コミュにバウアさんがYOUTUBEのURLを書き込んでくれた。
ZOOTVツアー初期の「ULTRA VIOLET」だった。僕はそのLIVE動画の虜になって何度も観た。
ハウス調に重ねられたシンセ・ストリングスとパーカッショナブルなベース・アルペジオのシーケンスと同期して演奏されていた。
これはすげえ!! こういうU2をやるコピバンになりたい!
でも問題は山積みだった。
◎同期演奏を叶える道具はどうするか?
◎打ち込みはどうやって作るか?
◎果たして格好いいのか?
実は前のバンドで何度かクリック(メトロノーム)との同期演奏をやった経験があった。
その当時は、メンバーに山のようなシンセ・セットを所有する優秀なキーボーディストが居たのでテクニカルな事は一切任せきりだった。
正直必要に迫られたことがなかった。
元来同期演奏は、ドラマーがクリックを演奏中聴き損ねるとTHE ENDというハイリスクな演奏方法だ。
だからドラマーが腹括らねば先ず始まらない。
しかし今回ラッキーな事に始めたいと願ってるのがドラマー本人なのだ。一つ目のハードルはクリアーした。
先ずは、ネットで地道に同期演奏の方法を調べてみた。
だが、情報があまりに乏しい事にすぐ気づいた。
なぜ?DTM隆盛の時代に?
ヒットチャートを賑わす邦楽は高確率で打ち込みトラックに唄を被せている。
彼らのライブではミュージシャンがシーケンスに合わせ演奏してるじゃないか!?
後々分かった事だが、同期演奏のセッティングに結局決定的な定義がないとのこと。
プロはPAからモニターに返すときシーケンスと他のモニターする楽器なりガイド・トラックなり自由が利くので、アマチュアバンドあたりにはあまり参考にならないことが分かった。
諦めず調べると、DTMソフトで作成したシーケンス・トラックとクリック・トラックを分けてMTR(マルチ・トラック・レコーダー)に移し、シーケンス・トラックはPAへ、一方のドラマーにクリック・トラックを送りモニターして演奏するのが1番簡単そうな事がわかった。
まず思い切ってMTRを買った。
KORGのD888という機種だ。
理由は簡単 8IN 8OUT 同期演奏に最適と謳ってあったから。
何のことか当時よく分からなかったのだが・・・
次にこれに入れる打ち込みのネタを作らなければならない。
MIXIにはありとあらゆるニッチ的なコミュがあるが、
同期演奏・・・こんなコミュは存在しなかった。
凄い・・なんて隙間な話題・・・
ないので仕方なく僕が管理者になってコミュを作った。
現在300人弱の参加者がいる。
・・・・・・・・・・・・があまり皆の役に立ってないコミュだ。
一人打ち込みを安価で作ってくれるレコーディング・エンジニアさんが参加してくれた。
あれこれやり取りしながらいろいろ教えてくれた。
彼のバンドはMACを2台使ってPAへ1回送りクリックと同期で被せたものを返してもらい演奏するのだそうだ。
凄い!! でも理解ないPAさんや30分のブッキングライブでそんなこと頼めそうにない・・
僕はエンジニアさんにULTRA VIOLETの打ち込みネタを依頼した。
「本家より攻撃的でトランシーな感じにしてください。」とお願いした。
この件でメンバーは本当によく協力してくれた。
費用負担も快くしてくれたし応援してくれた。
U2コピバンとして正に異質な存在となれる期待に胸が躍った。
後日出来てきた打ち込みは重厚なベースシンセがフューチャーされた素晴らしいものだった。
これに合わせてリハしているとき正直特別な事に挑戦しているような気持ちになった。
またVOCALのバウアさんが打ち込みの尺に合わせ完璧なパフォーマンスをしてくれた。
そのうち打ち込みレパートリーも増え、U2の曲ならなんでも出来る気がした。
自分でもDTMソフトを買い込み、参考書を大人買いし打ち込み作りに没頭した。
指揮を執るドラマーが作成するのは利に適っていると思う。
サンプリングもお手の物になったし、クリックも曲の転調に合わせエフェクトシンバルを入れてわかりやすくする事、ファイルを繋げて連続で打ち込み曲を繋げるなど技も身につけた。
クリックをモニターするのには、SHURE製のカナル型イヤホンを使った。
プロが使うような耳の型枠からつくるイヤモニも欲しかったが、これで十分だった。
こんなに勉強したのは、昔ブラジル人の女の子を口説こうとポルトガル語を必死に勉強した時以来だった。(関係ないか・・)
登場時のSEやリミックスも手懸けられたし、ZOOーTVのパロディで、時の首相やアイドルの声をサンプリングし、本家がZOOTVTOURでやったような電話タイムを試み、バウアさんと会話させ擬似トークした事もある。 360TOURの宇宙飛行士との交信もパロディした。
あれは今でも良い思い出のひとつだ。
世界広し、U2コピーするバンドはとてつもない数あるが、こんなことをやったバンドはいないだろう。
ライブは演奏を聴かすだけでなく曲間から緞帳が降りるまでショーなんだと思う。インディースでも動員あるバンドはすべからく皆そこらへんにも気を使っていると思うのだ。
打ち込みとの同期演奏には一長一短ある。
グルーブ感が損なわれる時がある。何かノリきれないものがある。
音楽には勢いによる奔り(ハシリ)が重要な時がある。正確なBPMを強要されると失われるものもあるのも痛感した。
だけど21世紀も10年経った今、アマチュア・ロックだって30年前と同じ陣容のステージばかりじゃ駄目だと思う。
ロックはオールドスクールなジャンルでは決してないことをもっと示さないと。
今や同期演奏がプロにしか許されないアイテムじゃ決してない。必要ならたった今からでもやるべきだ!と心から思う。
さて話が翻ってLIVEの話題に戻ると、自作でツアーTシャツまで作ってLIVEに目覚めたわれわれだったが、ここまでモチベーションを高められたのは、切磋琢磨する同じU2コピバンの存在が多大だった。
次回 トリバン編最終回へつづく
by october-blog
| 2010-06-23 23:48
| 太鼓大熊猫